手すりの設置、段差の解消、扉の取り替え。介護のための住宅改修は、暮らしの安全を大きく高めてくれる一方で、「やり直しがききにくい買い物」でもあります。壁に取り付けた手すりは簡単には動かせません。レンタルステーションみどりは、工事の提案をする前に「その家での暮らし方」を徹底的に聞くことから始める事業所です。「手すり1本にも、その位置である理由が要ります」と話す住宅改修の担当者に、失敗しない改修の進め方を聞きました。

住宅改修は「やり直しがきかない」からこそ

「住宅改修の失敗談で一番多いのは、『付けた手すりが使われていない』です」と担当者は言います。位置が数センチ合わない、握りにくい太さだった、そもそもその動線を通らなかった——。工事は完了しているのに、暮らしの役に立っていない。「壁に穴を開けて取り付けるものですから、気軽にやり直せません。だからこそ、工事の前の検討にこそ時間をかけるべきなんです」。

介護保険の住宅改修には支給の枠があり、使える機会は限られています。「限られた枠を、効果の薄い工事に使ってしまうのはもったいない。急がば回れで、聞き取りと検討を丁寧にやるのが結局一番の近道です」。

動線を、一緒に歩いてから提案する

みどりの住宅改修は、図面ではなく「歩くこと」から始まります。ご本人と一緒に、寝室からトイレまで、居間から玄関まで、実際の動線をゆっくり歩いてみるのです。「玄関からトイレまで、実際に一緒に歩いてみると、図面では分からないつかまり方の癖が見えてきます。柱のこの角をいつも掴んでいる、この敷居で必ず足が止まる。その癖こそが、手すりの位置の答えなんです」。

歩くのは一度ではありません。可能なら時間帯を変えて、昼と夕方の両方を見ます。「夕方は疲れが出て、昼間より動きが小さくなる方が多い。明かりの具合も変わります。安全は、一番調子の悪い時間帯に合わせて設計するものです」。同行するのはご本人だけではありません。普段介助しているご家族にも一緒に歩いてもらい、「どこで支えているか」「どこでヒヤリとしたか」を聞き取ります。「ご本人が『大丈夫』と言う場所ほど、ご家族は『実は危ない』と知っていたりします。両方の声を聞いて、初めて動線の全体像が見えるんです」。

手すり1本の高さを、ミリ単位で決める理由

動線が分かったら、手すりの位置と高さを決めていきます。みどりでは、ご本人の身長、握力、麻痺の有無に合わせて、取り付け高さをミリ単位で調整します。「標準的な高さはあくまで目安です。腰の曲がり具合が違えば、楽に掴める高さも違う。実際に仮の手すりを持っていただいて、一番力の入る高さを探します」。

形状の選択にも理由が要ります。握って使う丸い手すりか、手のひらを乗せて滑らせる平たい手すりか。縦に付けるか、横に付けるか、斜めか。「立ち上がりには縦、移動には横、と教科書は言いますが、最後はその方の体が決めます。私たちは体の声を聞く通訳です」。握力が弱い方には細めの径を、リウマチなどで握る動作がつらい方には前腕を乗せられる形を。素材の温度感まで含めて、選択肢は思いのほか豊富だといいます。取り付け前には壁の下地も確認し、体重をかけても安全な固定ができる位置を選びます。

進め方の全体像——聞き取りから確認まで

みどりの住宅改修は、おおむね次の流れで進みます。まず暮らしの聞き取りと動線の同行確認。次にケアマネジャー・リハビリ職と連携した改修計画の作成と、介護保険の事前申請。施工では在宅のまま短時間で済む段取りを組み、完成後にはご本人と一緒に「使う確認」を行います。「完成の確認は、見た目ではなく動作でします。実際に立ち上がって、歩いて、掴んでもらう。使えて初めて完成です」。

住宅改修の進め方の図。暮らしの聞き取りと動線の同行確認、ケアマネジャー・リハビリ職と改修計画づくり、介護保険の事前申請、在宅のままの施工、本人と一緒に動作で完成確認という5つのステップを示す

工事で解決するか、レンタルで解決するか

みどりの提案には、もうひとつの特徴があります。すべてを工事で解決しようとしないことです。置き型の手すり、突っ張り式の手すり、持ち運べるスロープ。工事をしなくても使える福祉用具は年々充実しており、場面によっては工事より適していることもあります。「工事は確実で頑丈ですが、動かせません。レンタルは移動も交換もできますが、置き場所を取ります。それぞれの長所を組み合わせるのが、私たちのような『レンタルもやる改修屋』の持ち味です」。

体の状態が変わる可能性が高い時期には、あえて工事を待つ判断もあるといいます。「リハビリで回復が見込める時期に壁へ固定してしまうより、まず置き型で様子を見て、動きが安定してから最適な位置に工事する。『変わる体』に合わせる余地を残すのも設計のうちです」。工事とレンタルの使い分けは、次の図のように考えると分かりやすいでしょう。

工事による改修とレンタル用具の使い分けの図。動線が固定していて長く使う場所は工事で確実に、体の状態が変わりそうな時期や試したい場面は動かせるレンタルで、と対比し、組み合わせが基本と示す

玄関まわりは、家の中の「事故の名所」

改修の相談で最も多い場所のひとつが玄関です。上がりかまちの段差、靴の着脱時のふらつき、たたきの狭さ。「玄関は、日本の家で一番大きな段差がある場所です。しかも靴を履くという不安定な動作が重なる。事故の名所と言っていいと思います」と担当者は話します。

みどりの玄関改修は、縦手すりの設置だけにとどまりません。段差を分割する式台の設置、靴の着脱のための椅子の提案、たたきの滑り止め。「腰かけて靴を履けるだけで、玄関の危険は大きく減ります。工事と道具と暮らし方の変更。三つの引き出しを組み合わせて、玄関を安全な場所に変えていきます」。外出の機会を守ることは、心身の元気を守ることでもあるといいます。「玄関が怖くなると、外出が減ります。外出が減ると、足腰が弱る。玄関の改修は、その悪循環を断つ工事なんです」。

水回りの改修は「滑り」と「またぎ」を見る

浴室とトイレの改修にも、みどりならではの勘所があります。浴室で見るのは、床の滑りやすさ、浴槽のまたぎの高さ、洗い場での立ち座り。「浴室は、濡れる・裸になる・またぐという危険の三拍子が揃う場所です。手すりの位置は、浴槽に入る動作を実際に再現してもらって決めます」。滑りにくい床材への変更や、またぎを補助する浴槽内の台など、工事と用具の合わせ技が特に活きる場所だそうです。

トイレでは、便座からの立ち座りと、夜間の動線を重視します。「トイレの改修で意外に効くのが、扉の開き方の変更です。内開きの扉は、中で転倒したときに救助の妨げになることがあります。引き戸や外開きへの変更は、いざというときの安全にもつながるんです」。

介助する家族の動線も、一緒に考える

住宅改修の主役はご本人ですが、みどりは介助するご家族の動きも同じくらい重視しています。「車いすを押す奥様の身長、夜中に介助に起きる息子さんの部屋の位置。介助する側の動線が無理だと、介護は続きません」。ベッドの位置ひとつでも、介助者が両側に立てるか、車いすを寄せる向きはどちらか、を考えて提案します。

「介助のしやすさは、ご本人の安全でもあります。無理な姿勢での介助は、転倒や腰痛のもとですから。住宅改修の聞き取りでは、ご家族の腰の調子まで聞くんですよ」と担当者は笑います。夜間の介助が多いご家庭では、介助者の寝室からご本人の部屋までの動線と照明も確認するそうです。家全体をひとつのチームの仕事場として整える。その視点が、暮らしの安定につながっています。

施工の質は、下地で決まる

工事そのものの質にも、みどりのこだわりがあります。手すりの安全は、見えている手すり本体ではなく、壁の中の「下地」で決まるからです。「壁の表面だけに留めた手すりは、体重をかけた瞬間に抜けることがあります。だから施工前に必ず下地の位置を探し、必要なら補強板を入れてから取り付けます」。施工は信頼できる提携の工務店と行い、取り付け後には担当者自身が体重をかけて強度を確かめるそうです。

施工中の立ち会いも大切にしています。「図面どおりに進めても、現場で数センチ動かしたほうが良い場面は出てきます。その場で判断できるよう、取り付けの瞬間には私が立ち会います。ミリ単位で決めた高さを、最後まで守り切るためです」。

改修の「効果」を、あとから確かめる

みどりでは、改修の数ヶ月後に「効果の確認」を行っています。ヒヤリとする場面は減ったか、夜のトイレは怖くなくなったか、外出の回数は変わったか。ご本人とご家族への聞き取りを、ケアマネジャーにも共有します。「工事は手段で、目的は暮らしの変化です。『転びそうになることが減った』『ひとりでお風呂に入れるようになった』という変化が確認できて、初めて改修は成功と言えます」。

効果が出ていなければ、原因を探して手を打ちます。「使われていない、効いていない改修をそのままにしないこと。それが、限られた改修の機会を預かる者の責任だと思っています」。

見積もりと説明は、比べられる形で

費用面の透明性にも、こだわりがあります。みどりの見積もりは、工事の内容ごとに分けて金額を示し、介護保険の対象になる部分とならない部分をはっきり区別します。「『一式いくら』の見積もりでは、比べることも検討することもできません。他社と比較してもらって構わない形でお出しします」。

介護保険の住宅改修には事前申請が必要で、書類の作成や理由書の準備など、手続きにも段取りがあります。「手続きはこちらとケアマネさんで進めますからご安心を。ただし、『申請前に工事を始めてはいけない』ことだけは覚えておいてください。慌てて着工すると、保険が使えなくなってしまうことがあります」。

借家や集合住宅でも、あきらめない

「うちは借家だから改修はできない」とあきらめている方も少なくありません。みどりは、そこにも選択肢があると言います。賃貸住宅での工事には大家さんの承諾が必要ですが、手すり設置程度なら相談すれば認められるケースもあります。「承諾の相談に使える説明資料をお渡しすることもあります。退去時の原状回復の話も含めて、先に整理しておくのが円満のコツです」。

工事が難しい場合は、置き型手すり、突っ張り式の手すり、据え置きスロープなど、工事不要の用具を組み合わせて安全を確保します。「壁に穴を開けなくても、できることは思っている以上にあります。住まいの条件を理由に安全をあきらめる必要はありません。条件の中での最適解を一緒に探しましょう」。

季節で変わる家の危険にも、目を配る

住宅改修の聞き取りでは、季節の話も出てきます。冬の廊下の冷え、脱衣所と浴室の温度差、夏の網戸と換気。「家の危険は季節で変わります。冬は寒さで体がこわばって転びやすくなりますし、急激な温度差は体への負担になります。暖房器具の置き場所とコードの這わせ方まで含めて、冬の家を一度見せていただくこともあります」。

玄関マットや電気コード、新聞の束といった「段差未満のつまずきのもと」も、訪問のたびにさりげなく確認しているそうです。「工事だけが私たちの仕事ではありません。マットの端がめくれていたら直す。その一声も、転倒予防のうちです」。

完成後の「その後」も見に来る

工事が終わり、確認も済んだ。それでも、みどりの仕事は終わりません。数週間後、レンタル用具のモニタリング訪問などに合わせて、改修箇所の「使われ具合」を見に来るのです。「手すりに手垢がついていたら、使われている証拠。ぴかぴかのままなら、何かが合っていないのかもしれません。手垢は勲章なんです」。

使われていない場合は、原因を探って調整します。動線が変わったのなら追加の提案を、使い方が分からないのなら再度の説明を。「工事は一回でも、暮らしは続いていきます。『あの手すり、使ってますか』と聞きに来る改修屋を、ぜひ選んでください」。

「その人の10年後」まで想像して提案する

みどりの提案には、時間軸の視点も織り込まれています。いま必要な改修と、数年後に必要になりそうな改修。「たとえば手すりの下地補強だけ先に広めに入れておけば、将来手すりを追加するとき、壁を壊さずに済みます。いま見えている困りごとの一歩先を、工事の中に仕込んでおくんです」。

一方で、先回りのしすぎにも注意しているといいます。「使わない設備を先に付けても、暮らしの邪魔になるだけです。『いま付けるもの』と『備えだけしておくもの』を分ける。この見極めは、ケアマネさんやリハビリ職の見立てがあってこそできることです」。改修は一度きりの工事ではなく、変わっていく暮らしとの付き合いなのだと教えられます。

相談のしかた——「困りごと」をそのまま伝える

最後に、住宅改修を考え始めた方へのアドバイスを聞きました。「『手すりを付けたい』ではなく、『夜のトイレが怖い』と伝えてください」と担当者は言います。手段ではなく困りごとを伝えれば、解決策は手すりかもしれないし、置き型用具かもしれないし、動線の変更かもしれない。「困りごとから一緒に考えるのが、私たちの仕事です。手段を最初に固定しないほうが、良い答えにたどり着けます」。

相談の窓口は、担当のケアマネジャー経由が基本ですが、直接の問い合わせにも応じています。「気になる段差の写真を撮って見せていただくだけでも、話は始められますよ」。

まとめ

レンタルステーションみどりの住宅改修は、「工事ありき」ではなく「暮らしの聞き取りありき」で進む点に特徴がありました。動線の同行確認、ミリ単位の高さ調整、工事とレンタルの組み合わせ、介助者の動線への配慮、そして完成後の見守り。住宅改修の事業所を選ぶときは、「工事の前にどれだけ聞いてくれるか」「完成後に見に来てくれるか」を目安にしてみてください。手すり1本の理由を語れる事業所なら、きっと頼りになります。